宙組「WEST SIDE STORY」感想 | 週末観劇生活。

MUSICAL「WEST SIDE STORY」

原案/ジェローム・ロビンス

脚本/アーサー・ロレンツ

音楽/レナード・バーンスタイン

作詞/スティーブン・ソンドハイム

オリジナルプロダクション 演出・振付/ジェローム・ロビンス

演出・振付/ジョシュア・ベルガッセ

演出補・訳詞/稲葉 太地

at 東京国際フォーラム ホールC

◆主な配役

トニー:真風涼帆

マリア:星風まどか

ベルナルド:芹香斗亜

ドク:英真なおき

シュランク:寿つかさ

ロザリア:花音舞

ヴェルマ:綾瀬あきな

クラプキ巡査:松風輝

ビッグディール:星吹彩翔

チノ:蒼羽りく

グラツィエーラ:結乃かなり

ディーゼル:風馬翔

ペペ:美月悠

エステーラ:愛咲まりあ

スノウボーイ:春瀬央季

リフ:桜木みなと

インディオ:実羚淳

アニータ:和希そら

コンスエーロ:瀬戸花まり

ベイビージョン:秋音光

アンクシャス:秋奈るい

テレシータ:小春乃さよ

グラッドハンド:穂稀せり

アクション:瑠風輝

エイラブ:潤奈すばる

フランシスカ:水音志保

エニボディーズ:夢白あや

舞台は1950年代のニューヨーク。ウエストサイドでは欧州系移民の白人若者集団ジェッツとプエルトリコ系移民一世の若者集団シャークスが縄張り争いを繰り返し、緊張が最高点に達そうとしていた。プエルトリコ系移民への人種差別意識を持ち、ジェッツの若者の非行に手を焼くシュランク警部補とクラプキ巡査の登場でその場は一旦収まるが、ジェッツのリーダー・リフはシャークスとの争いに決着をつけるため、その夜中立地帯の体育館で行われるダンスパーティで決闘を申し込む決意をする。

リフはかつての盟友で今はギャングから足を洗っているトニーに立ち会ってほしいと頼むが、トニーは何かが起こる予感がする、と心ここにあらずな様子。しかしリフの熱心な頼みを聞き入れて、トニーはダンスパーティに向かうと約束する。

一方、チノと結婚するため兄・ベルナルドに呼び寄せられたマリアは初めてのパーティに心躍らせ、ベルナルドの恋人・アニータに仕立ててもらったドレスを着てはしゃいでいる。

ダンスパーティでもジェッツとシャークスはダンスで激しく火花を散らせるが、その最中にトニーとマリアは運命的な出会いを果たし、一目で恋に落ちる。

しかしそんな2人をよそにジェッツとシャークスは決闘を行うことになる。争いを止めるためトニーは決闘場所のハイウェイに向かうが、一瞬の隙を突いてベルナルドがリフを刺し殺してしまう。逆上したトニーはベルナルドをナイフで刺し殺す。

決闘場所から逃げたチノがマリアのもとに悲しい知らせを伝えにやってくる。トニーはマリアのもとを訪れ、ドクのドラッグストアで落ち合って2人でどこかに逃げようと話す。トニーが去ったあとシュランク警部補が現れ、マリアから話を聞きたいと言い出す。マリアはアニータにドラッグストアに向かいトニーに遅れると伝えてほしいと頼む。しかし、アニータはトニーに会おうとするも会わせてもらえずジェッツの面々に暴行を受け深い傷を負い、マリアはトニーとの関係を知ったチノに撃ち殺されたと嘘を言う。トニーはそれを知り絶望のあまり自分も撃ってほしいとチノを探して夜の街をさまよう。トニーとマリアが再会したそのとき、チノがトニーに発砲し、トニーはマリアの腕の中で息絶える。

WEST SIDE STORYという作品自体は映画や他のカンパニーによる上演でも観ていますが、回を重ね時を経るごとにこの作品の持つメッセージが重く心に響き、いかに上手く作られているかを実感し、色褪せない不朽の名作という意味を理解する思いです。

観る度に発見がありますが、今回印象に残ったのは、決闘は素手で行うと取り決めたのに、互いにナイフを持ち込んでいたという事実でした。相手のことがよく分からないがゆえの恐怖、侮られたくない・負けたくないというプライド、怯えと見栄、色々な要素があると思いますが、それらが肥大した結果、刃物という凶器でぶつかり合い、ついには攻撃してしまう、その愚かさと弱さが、まさに今の国際社会にも当てはまるものだと感じました。例えば、核兵器を持っているから強いんだぞという誇示、核兵器があれば何かあったとしても対処できるという信仰、何があるか分からないからこそ強力な武器を持っていたいという思惑などから現在の緊迫状況が生まれている気がしますが、これらは結局平和的な解決には繋がらず、むしろ一触即発の状況にまで陥りかけています。チノが「誰もそんなつもりじゃなかった」と言いますが、これは真実だと感じていて、誰も本当は傷つけるつもりはなかったのに、恐怖やプライドが肥大化し暴走するととんでもないことになってしまう、その教訓をWEST SIDE STORYは示しているのだと思いました。本来はやはり、穏便に解決できる可能性が必ずあるのだと思います。

また、差別と貧困の問題も考えさせられました。ジェッツも白人とはいえ元は移民の子で、貧しく教育環境も悪く、不満や鬱憤を非行という形でしか発散できずにいます。プエルトリコ系移民のシャークスの面々も、アメリカに希望を抱いてやってくるも、人種差別の高い壁に阻まれています。どちらにしても、アメリカという自由の国の最下層に位置させられ、社会から疎外され、成功をつかむスタートラインにすら立てず切り捨てられている人々です。こうした弱い者同士がそれでもわずかな権益を争って対立しているという構造が虚しく、悲しい気持ちにさせます。本来は貧困や差別の問題を根本的に解決していくことができれば、こうした悲しい対立も抗争も起きないのだと思います。根深く難しい問題ではありますが、諦めずに解決していかなければならない問題であり、WEST SIDE STORY初演から60年以上経過してもこのメッセージが色褪せることがないというのは凄いことではありますがある意味悲しいことでもあると思いました。

今回は真風さん星風さんのプレお披露目公演ですが、お2人とも主演経験も豊富だからかしっかりしていて安心して観ることができました。

真風さんは骨太で頼れるお兄さん感があり、包容力いっぱいの素敵なトニーでした。星風さんも可憐な少女姿からラストの皆を糾弾し訴えかける力強い姿まできっちり魅せてくれました。お2人とも歌唱であともう少し…と思うところもありましたが、楽曲のキーが高く難しいところが多いのだと思うので、回を重ねるごとにどんどん良くなっていくと思います。

芹香さんのベルナルドは黒塗りにスーツの似合うイケメンで、アメリカで一旗上げられそうなスマートさがありました。妹マリアに対しては過保護なところも、恋人アニータに見せるセクシーな表情も格好良かったです。アニータの和希さんは今回一番の注目を集めたのではないかと思うほどの好演でした。台詞の言い回しや声のトーン、仕草など大人の女性の落ち着きと色気があり、大ナンバー「America」をはじめとしてダンスもとても格好良かったです。2幕のベルナルドを失った悲しみを抱えながらマリアの思いを叶えようと決意する複雑な感情の動きの表現も見事でした。

桜木さんのリフはいきがったやんちゃなギャング感とジェッツのリーダーの風格があり、真ん中に立って場を作る力がぐっと増した気がしました。蒼羽さんのチノは喧嘩は強くなくても心優しくマリアのことを思っている青年像がくっきりと伝わってきて良かったです。

女性だけで演じるのはダンスやコーラスの面で難しいところも多々あると思うのですが、有名な振付やフェンス越えもきっちりこなし、総力あげてしっかりまとまった舞台を見せてくれた宙組さんの頑張りに感心しました。真風さん、星風さん、トップ就任おめでとうございます。

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